ヘテロクリニックの日記

病院勤務医時代に、今の医療体制では患者さんも医療者も幸せになれないのではと感じ、誰もが笑って幸せに生きる医療を届けるべく自由診療を開始しました。癌治療、緩和ケア、訪問診療などの経験を活かし、病気による人間関係、現在の医療問題、就労問題などを楽しく書こうと思います。

先入観、思い込みが人生を悲観的にしてしまう

ずいぶん昔のことですが、

胃癌の告知後に自殺をされた患者さんがいました。

その方はなんとなく調子が悪いと病院で胃カメラをされて

初期段階の早期胃癌を発見されたのでした。

この大きさであれば内視鏡で切除できるであろうという小さなもので、

検査する人によっては小さすぎて見落としてしまうのではないかと思われるほど

でした。

つまり根治といって治癒ができる可能性が非常に高いものでした。

 

しかし癌と聞いただけで、気が動転してしまい

もう人生おしまいと悲観し塞ぎ込んでしまいました。

その方の奥様が別の癌で闘病し亡くなっていました。

奥さんが亡くなったのをきっかけにすっかりと元気がなくなっていたようでした。

 

「もう嫌だ。死にたい。」

もちろん治療をする予定の病院でも

どのように治療し、予後がどうなのかお話されているのですが、

混乱している状態なので頭に入っていきません。

 

内視鏡治療の入院の前日、自宅で自殺をしていました。

 

癌というわからないものに対する恐怖

奥さんの闘病の様子を辛くてみていられなかったこと

これからの人生に対する絶望感

様々な思いがあったのかもしれません。

 

本当に死にたかったのでしょうか?

それとも怖くて現状から逃げ出したかったのでしょうか?

結局のところ本心は本人にしかわかりませんが

怖いから死ぬというのは奇妙なことのように感じませんか?

癌で死ぬことが怖いのであれば死ぬことが怖いのではなく

生きている間の時間が怖いのかもしれません。

生きていることが辛い、

生きていることが悲しい、

生きていることが苦しい、、、。

 

最近では初期段階の胃癌も多くみつけられるようになりました。

また治療も本当に早期であればお腹を切らずにできる内視鏡治療もどんどん

されるようになりました。

ですから癌=死ではない場合もたくさんあります。

特に早期の胃癌であれば今までと同じような生活ができることが多いのです。

 

しかし、多くの方がテレビや過去のイメージで癌=死と

連想しやすいのではないかと思います。

癌=死=終わりではないことを知っていただきたいと思います。

 

多くの方が本当は生きる間の葛藤を一番辛いと感じるのではないかと思うのです。

 

そうであるのならば、冷静にいられる時間が必要です。

自分の混乱を落ち着かせる場所が必要です。

自分の人生の終わりを突きつけられたのではなく

自分の人生の生き方を見つめ直す時間であることを知り、

その過程で出てくる感情を処理できるようになると

生きてきた意味を見出せるかもしれません。