ヘテロクリニックの日記

病院勤務医時代に、今の医療体制では患者さんも医療者も幸せになれないのではと感じ、誰もが笑って幸せに生きる医療を届けるべく自由診療を開始しました。癌治療、緩和ケア、訪問診療などの経験を活かし、病気による人間関係、現在の医療問題、就労問題などを楽しく書こうと思います。

私がへテロクリニックでこの仕事を始めたわけ(15)

私は自分の出会う患者さんには病気なったことで

自分の人生を後悔してほしくないと思っていました。

私自身も後悔するような人生を送りたくないのです。

 

癌を告知する時、

病気のせいで人生がダメになったとか

病気のせいで何もかも失ったとか

そう感じる方が多いのではないかと思いました。

これまでの生き方を否定されたように感じることもあるでしょう。

頑張って仕事をしたり、自分を犠牲にしてきたのに

どうして自分ばかりがこんな目にあうのだ

そうことを口にされる方がいました。

それだけ、本当に頑張っている人は世の中には多いのではないかと思います。

 

失礼ながら病院に勤めていた当初は

患者さんのことがかわいそうだと思っていました。

頑張ってきたのに、苦しんできたのに、

そういった怒りや悲しみが強く出るたびに

みんな、こんなに報われない人生なんだと思っていました。

自分の人生もどこかでどれほど頑張っても報われないもの、辛く厳しいもの

そんなことを感じていたので

お互いの辛い境遇を慰め合うような感覚になっていたのでした。

辛いね、辛いね、この辛さどうしたらいいんだろうね。

そのような気持ちで接しているといっけん患者さんのことを思って

良いことをしているような錯覚がありました。

しかし、本当に同じような気持ちであるかどうかはわかりません。

同じだけ辛いかわかりません。

わかったつもりになっているだけだったのではないかと思います。

本当はいち早くそこから出て

前向きな行動を起こしたい方もいたのではないかと思います。

 

患者さんたちは病室で日々治療と向き合ううちに

人生が大きく変化していくこともありました。

家族関係が大きく変わった方も多くいました。

仲違いしていた家族と和解したり、

離婚して長年会っていない元奥さんや娘さんに会い

娘さんの結婚式に出ようと決心したり、

病気の奥さんのために仕事の仕方を変え、

今までできなかった二人の時間を大切にしようと旦那さんもいました。 

自分の意思をつら抜いた生き方がしたいと奮闘される方もいました。

家族や周囲の人も動かし、自分自身の本当の幸せを

見つけられる方もたくさんいました。

おそらく癌になっていなければ、そのような選択はしなかったのではないか

と思うような人生を歩まれる方がたくさんいました。

 

そう考えると癌って一体なんだろうと思います。

人それぞれに解釈があり、

その人の答えがあるのだと思います。

ですから、これが正解と言えないのではないかと思っています。

治療に関しても生き方に関しても、本当は自分で見つけ出すものなのかもしれません。 

 

多くの方が癌になって初めて

自分の生きることと向き合えるようになったのではないかと思います。

生きるとはどういうことなのでしょう?

ただ生きているだけという人生に人は満足しないのではないかと思います。

どんな人生を送りたいか

改めて自分も患者さんと接するなか見つめていきたいと思っています。