ヘテロクリニックの日記

病院勤務医時代に、今の医療体制では患者さんも医療者も幸せになれないのではと感じ、誰もが笑って幸せに生きる医療を届けるべく自由診療を開始しました。癌治療、緩和ケア、訪問診療などの経験を活かし、病気による人間関係、現在の医療問題、就労問題などを楽しく書こうと思います。

仕事辛いんです。そこから抜け出すには?

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朝の通勤の時、電車に乗るとお腹が痛くなったり、

下痢をしてしまう人がいるのをご存知でしょうか?

このような症状を過敏性腸症候群といいます。

まだはっきりとした原因は解明されていませんが、

ストレスがこの症状を起こす一因であると言われています。

ストレスは本人が自覚していないこともあります。 

こういった方は真面目に働き、周囲のこともよくみていて、

社会的にはとてもよくできた人と評価されることもあります。

 

数年前の出来事です。

私の診察に一人の男性がよく通ってきました。

診察室ではいつも私にとても明るく話をしていますが、

彼は過敏性腸症候群で悩む一人でした。

「いつもね、ダメなんですよ〜。電車に乗って一駅ぐらいでもうトイレ。

ああ、会社行かなきゃって思ってるんですけど。

からだが言うこと聞いてくれないんです。

でもね、休日は大丈夫なんですよ。」

「会社に行く時だけなんですね?」 

「そう。だから余計嫌なの。本当に自分が嫌になるんです。

ダメなやつだなってと思うんです。」

「どうしてダメだと思うんですか?」

「それは、、、。だってちゃんと会社行けないじゃないですか?

本当は行かなきゃダメなのに。

いや、正直しんどいんですよ。仕事、、、。

気を使わないといけないし、上司なかなかうるさくて、下の子たちも大変で、、、。

時々逃げて一人になれたらって思ったりしますよ。」

 

彼にとってとにかく大変だと思うことがたくさんありすぎるようでした。

 

一般的には社会に適応できるほうが望ましいとされています。

きちんと仕事ができて、人間関係もうまくいっていて

周囲に適切な気配りができる人。

そんな人は会社でも重宝されるかもしれません。

 

実際のところ、本当に何もわだかまりなくそれができている人って

どのぐらいいるのでしょうか。

 

ストレスってやっかいです。

様々な病気の原因になります。

多くの人がストレスを抱えて生きている世の中。

このストレスの原因を解消できたらどんなにいいことか。

そう思いませんか?

 

彼の場合、上司や部下との関係に悩み、

とてもストレスを感じているようでした。

悩みを抱えたまま会社に向かい通勤中におなかの症状が現れ

そのことにも悩み、悪循環になっているようでした。

彼は私と話をする時、なんだかとても明るく楽しそうに振る舞うのですが

私にはなんだかその姿を不自然に感じていたのでした。

無理しているようにしかみえないのです。

もう仕方がないからさと笑顔で諦めた様子で

毎月薬をもらうことが習慣のようになっていました。

しかし、私と話をする時は本当は何か言いたそうな気もがしてなりませんでした。

短い診察の時間なので私も多くは話せません。

「これからどうしたいですか?本当はどうしたいですか?」

「う〜ん。考えてみます。」

 そう言いながら診察室をでていかれました。

 

ある時、いつになくはっきりとした表情で診察に入ってこられました。

「会社辞めることにしました。」

入ってすぐにそう言いました。

「もう限界だったんです。ちゃんと自分のできることをしたいです。」

いつもの不自然さがありませんでした。

本当に決意されたのでしょう。

「どこまでできるかわかりませんが、

前からいつかやりたいと思っていたことがあって。

今このままでいるよりもずっといいと思いまして。」

 

それ以降彼は診察に来ることはなくなりました。

実際彼がどうなったのかはわかりません。

少なくとも私のところに薬をもらいに来なくなったのはたしかです。

もう必要がなくなったのかもしれません。

 

誰かに認められるように行動をしたり

誰かの反応を気にしていたり

自分が犠牲になるような行動をしたり

無理をして明るくふるまったり

多くの人が自分を偽って生きているかもしれません。

確かに人から嫌われると思うと怖くなってしまうかもしれません。

でも、本当に自分のやりたいことをやるのであれば

周囲のことは気にする必要はないのではないでしょうか。

 

もし人が気になって行動できない人がいるのであれば

本当の自分はどうしたいのか

自分に正直に聞いてみましょう。

もし、自分で答えがみつけにくいのであれば

感情カウンセラーに相談してください。

 ひょっとすると自分の奥底に埋もれた声に気がつくかもしれません。